楠原行政書士事務所

遺産相続、遺言書作成、会社設立、著作権関連業務、その他会社法務

ホーム
遺産相続
遺言書
成年後見
会社の設立
契約書の作成
契約書の実際の作成例
契約書の作成のご依頼
会計記帳
企業法務
著作権業務
お問い合わせ
料金表
個人情報取扱方針
サイト マップ
遺留分減殺請求とは
(実際の作成例)
 
 行政太郎さんは、友人の札幌小次郎さんより「娘の入院費と手術代を明後日までに病院に払わなければならない、何とか100万貸してほしい」と頼まれました。まあ、娘の病気なら貸してあげなければしょうがないかな、と思い貸すことにしましたが、さすがに契約書も無しに貸すことはできないと考えて、契約書を作ることにし、本屋の書式集を買って以下のひな形を基に契約書をつくることにしました。
(人物名、住所は架空のものです。)
 
                                                 金銭消費貸借契約書
                    
 貸主  (以下、「甲」という。)と借主  (以下、「乙」という。)は、次の通り金銭消費貸借契約を締結した。
 
第1条  甲は乙に対し、本日、金     万円を貸付け、乙はこれを受領した。
第2条  乙は、甲に対し、前条の借入金   万円を平成 年 月から平成 年 月まで毎月 日限り金  万円
      宛分割して、甲方に持参して支払う。
第3条  利息は年  パーセントとし、毎月  日限り当月分を甲方に持参して支払う。
第4条  期限後又は期限の利益を失ったときは、以後完済に至るまで、乙は甲に対し、残元金に対す
      る年  パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
第5条  乙について、次の事由の一つでも生じた場合には、甲からの通知催告がなくても乙は当然に
      期限の利益を失い、直ちに元利金を支払う。
      ① 第2条の分割金又は第3条の利息を1回でも期限に支払わないとき。
      ② 乙が甲に通知なくして住所を変更したとき。
第6条  本契約に定めのない事項が生じたとき、又はこの契約条件の各条項の解釈につき疑義が生
      じたときは、甲乙誠意をもって協議の上解決するものとする。
 以上、本契約成立の証として、本書を二通作成し、甲乙は署名押印のうえ、それぞれ1通を保管する。
   平成 年  月  日
                  貸主(甲) 住所  
                          氏名  
                  借主(乙) 住所  
                          氏名  
 
 札幌小次郎さんは借家に住んでいて不動産を持っているわけでもなく、車も年数がたっていて処分をするのにお金がかかるような状態です。ただし、働いている弟さんがいるので連帯保証人になってもらうことにしました。また、疑うわけではないのですが、札幌小次郎さんは少し遊び人なので本当に入院費に使うのかちょっぴり心配です。
 
以下に、変更する内容や留意点を赤字でを記載してみます。
                          
                     金銭消費貸借契約書
                    
 貸主 行政太郎 (以下、「甲」という。)と借主 札幌小次郎 (以下、「乙」という。)は、次の通り金銭消費貸借契約を締結した。
 
第1条  甲は乙に対し、本日、金100万円を貸付け、乙はこれを受領した。
 乙が金銭を受領した旨の文言を入れることによって、要物契約である金銭消費貸借契約が成立したことを示しています。
 
第2条  乙は、甲に対し、前条の借入金100万円を平成23年1月から平成24年8月まで毎月末日 
      限り金5万円宛分割して、甲方に持参して支払う。
 民法の原則は持参式払いのため、多くのひな形はこのような記載になっていますが、銀行振込の方が便利であるし一般的だと思います。
 そこで、甲方以下の部分を「以下に記載する甲の銀行口座に振り込むことにより支払う。銀行名 口座番号」のように変更します。また、念のため振込手数料の負担についても記載しておきます(民法上は「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする」と定められています(民485)。)。
 
第3条  利息は年3パーセントとし、毎月末日限り当月分を甲方に持参して支払う。
 利息制限法(※)により、年15%が上限となります。ただしここでは友人に対する入院費ということもあり、年3%と仮にします。また、利息の計算方法(両端入れか方端入れ)を示し、利息も返済と合わせて支払ってもらうことにします。また、返済予定表を付けておいた方がよいでしょう。
 
第4条  期限後又は期限の利益を失ったときは、以後完済に至るまで、乙は甲に対し、残元金に対す
      る年  パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
 遅延損害金は、定めのない場合年5%(民419、404)になります。定める場合には、年21.9%(15%×1.46)が上限となります(※利息制限法第4条)。一般的には5%とすることが多く、ここでは5%とします。
 
第5条  乙について、次の事由の一つでも生じた場合には、甲からの通知催告がなくても乙は当然に
      期限の利益を失い、直ちに元利金を支払う。
      ① 第2条の分割金又は第3条の利息を1回でも期限に支払わないとき。
      ② 乙が甲に通知なくして住所を変更したとき。
 期限の利益の喪失条項です。上記に加えて、札幌さんの個人的な状況が悪くなったときに備えて、「借主乙が第三者から差押もしくは仮差押を受け、または破産の宣告を受けたとき」という条項も入れてみます。また、「期限に支払わないとき」とするのはちょっと厳しすぎるかもしれません。ここでは「2週間」に変更してみます。
 
第6条  本契約に定めのない事項が生じたとき、又はこの契約条件の各条項の解釈につき疑義が生
      じたときは、甲乙誠意をもって協議の上解決するものとする。
 日本固有の条項です。法的な意味は特にありません。一種のおまじないのようなものかもしれません。おまじないとしてとりあえず入れておきます。
 欧米の契約書では、ここに具体的な紛争解決のための手段(仲裁)の条項が入ります。 
 日本の契約書でこのように誠意解決条項が置かれるのは
 ・日本では仲裁機関が発達していない(平成19年にADR(裁判外紛争解決手続)法が施行され、 
  ADRの利用促進がなされていますが、まだ社会的に認知されてるとは言えないようです。)
 ・日本人独自の法概念(日本と欧米の契約に対する概念の違いについては、内容は古いですが、中
  根千枝著『タテ社会の人間関係』などが参考になります)
 といったものがあると思われます。
 ADRが広く社会に根付けば、「どこそこの紛争解決センターに仲裁を申し立てることを合意する」みたいな条項が一般的になるかもしれません。 
 
 
 以上、本契約成立の証として、本書を二通作成し、甲乙は署名押印のうえ、それぞれ1通を保管する。
   平成22年11月15日
                  貸主(甲) 住所 札幌市中央区北5条西38丁目2番2-101  
                          氏名 行政 太郎 
                  借主(乙) 住所 札幌市東区北51条東40丁目3番3-303 
                          氏名 札幌 小次郎 
乙の押印には実印を用い、印鑑証明を添付してもらった方がいいかもしれません。
とくに連帯保証人は必ず印鑑証明書を付して実印を押してもらいましょう。必ず面前でしてもらってください。
住所は基本的に住民票の記載通りに記載することが一般的です。札幌市の場合は政令指定都市であるため「札幌市~」と書きますが、たとえば小樽市の場合は「北海道小樽市~」と書きます。
このほかに、
・資金使途の確認の条項
・連帯保証の条項
・貸主が公正証書にしたい場合の条項
・そして約2年の間に相手が引っ越してしまうかもしれませんから、念のため合意管轄の条項
を入れてみます。
 
 以上により契約書を起案してみます。
 
                      金銭消費貸借契約書 
                    
 貸主 行政太郎 (以下、「甲」という。)、借主 札幌小次郎 (以下、「乙」という。)及び乙の連帯保証人である 札幌小三郎 (以下、「丙」という。)は、以下の通り金銭消費貸借契約を締結した(以下、「本契約」という。)。
 
(資金の貸付及び受領)
第1条  甲は乙に対し、本日、金100万円を貸付け(以下、「本貸付」という。)、乙はこれを受
      領した。
 
(資金使途)
第2条  本貸付は、乙の長女である札幌花子の病気入院費及び手術費用の支払いに充てる  
      ものとし(以下、「本資金使途」という。)、乙は本資金使途以外に本貸付を使用しな
      いことを、甲に対して確認する。
 
(返済方法)
第3条  乙は、甲に対し、前条の借入金100万円を平成23年1月から平成24年8月まで毎
      月末日限り金5万円宛分割して、以下に記載する甲の銀行口座に振り込むことによ
      り支払う。なお、銀行振込手数料は乙の負担とする。
       (甲の銀行口座)
        北洋銀行西38丁目支店
        普通預金 1234567
 
(利息) 
第4条  利息は年3パーセントとし、平成23年1月末日より毎月末日限り前条に記載する分
      割金の返済と併せて前条記載の甲の銀行口座に振り込むことにより支払う。なお、
      利息は片端入れ後払いにより計算することとし、各月の返済金額については添付の 
      返済明細のとおりとする。
 
(遅延損害金)  
第5条  期限後又は第5条若しくは第8条に規定する期限の利益を失ったときは、以後完済に 
      至るまで、乙は甲に対し、残元金に対する年5パーセントの割合による遅延損害金を
      支払う。
 
(期限の利益の喪失)
第6条  乙について、次の事由の一つでも生じた場合には、甲からの通知催告がなくても乙
      は当然に期限の利益を失い、直ちに元利金を支払う。
      ① 乙が第2条の分割金又は第3条の利息を期限に支払わず2週間を経過したとき
         とき。
      ② 乙が第三者から差押もしくは仮差押を受け、または破産の宣告を受けたとき
      ③ 乙が甲に通知なくして住所を変更したとき。
 
(資金使途の確認)
第7条  乙は、本日より3日以内に、甲に対し支払いを行った病院の領収書原本を提示すると
      ともに、その写しを甲に交付する。
   2  前項に規定する領収書の提示が行われないとき、また、呈示が行われないことにつ    
      いて正当な理由があると甲が認めないときには、乙は、ただちに本日より年8パーセ
      ントの割合で計算した利息を付して、甲に本件貸付全額を返済するものとする。
 
(連帯保証)
第8条   連帯保証人丙は、乙が本契約によって負担するいっさいの債務について、乙と連帯し
      て保証債務を負うものとする。
 
(公正証書)
第9条  乙及び丙は、甲の要請がある場合には、本契約の内容について、強制執行認諾文
      言つきの公正証書とすることを承諾する。
 
(費用)
第10条  この契約書の作成及び公正証書の作成等本契約に係る一切の費用は乙の負担とす
      る。
 
(合意管轄)
第11条  甲、乙、及び丙は、本契約につき紛争が生じた場合、甲の住所地を管轄する裁判所
      を管轄裁判所とすることに合意する。
 
(協議解決)
第12条  本契約に定めのない事項が生じたとき、又はこの契約条件の各条項の解釈につき疑
      義が生じたときは、甲乙及び丙は誠意をもって協議の上解決するものとする。
  
 以上、本契約成立の証として、本書を三通作成し、甲乙及び丙は自署押印のうえ、それぞれ1通を保管する。なお、乙及び丙は実印により押印し、印鑑証明書をそれぞれ甲に差し入れる ものとする。
 
   平成22年11月15日
 
              貸主(甲)    住所 札幌市中央区北5条西38丁目2番2-202号  
                         氏名 行政 太郎 
              借主(乙)    住所 札幌市東区北51条東40丁目3番3-303号 
                         氏名 札幌 小次郎 
                連帯保証人(丙)住所 札幌市北区北53条西28丁目4番4-101号
                        氏名 札幌 小三郎
 
  このようになりました。
 契約書については、インターネット上のやりとりでも作成をお承りいたします。 
 
 
(参照条文)
 
利息制限法
(利息の制限)
第1条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
1.元本の額が10万円未満の場合 年2割
2.元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分
3.元本の額が100万円以上の場合 年1割5分
 
(賠償額予定の制限)
第4条  金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第1条第1項に規定する率の1・46倍を超えるときは、その超過部分につき無効とする。
2 第1条第2項の規定は、債務者が前項の超過部分を任意に支払つた場合に準用する。
3 前2項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。
 
民法
(金銭債務の特則)
第419条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
(法定利率)
第404条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。